静寂に包まれた夜、その暗闇をさまよう一人の男がいた。男は江戸の町を見てこうつぶやいた。
「俺をめちゃくちゃにしてくれた幕府よ。もうすぐ終わりにしてやる。江戸の町ももうすぐ地獄の焼け野原だ。」
男はつぶやくと少しずつ足を進めていき、再び静寂が戻った。
翌日、百香は舞子、優樹奈とともにゲーセンで遊んでいた。三人はUFOキャッチャーに挑戦していた。
舞子と百香が終わり、最後に優樹奈が挑戦した。
「よーしこの辺で」
うまくいったかに見えたが
「あぁっ、」
うまくつかめず失敗してしまった。
「わたしも景品欲しかったのに〜っ!」
景品が取れずに泣き出す優樹奈、すると
「しゃあないね。あたいのやるからもう泣かないの。」
優樹奈は百香がとった景品をもらって泣き止んだようだ。
その後三人がゲーセンを出て家に帰ろうとしたその時だった
ドドーン!
突然目の前で爆発が起こった。
爆発が収まるとそこには黒い着物を着た一人の男が立っていた。
「久しぶりだな百香。」
名前を呼ばれてなんで自分の名を知ってるんだろうと驚く百香だったが、名前を呼ばれてあることを思い出した。
「君は寺子屋の」
実は男は百香の幼馴染の一人、爆破撃男で寺子屋に通ってた頃は常に孤独だったのだ。百香は撃男が人生を踏み外さないよう常に気にかけてたのだが、撃男は自分がここまで悪くなったのは幕府のせいだと思い込んで・・・
「ええい余計な解説いらん!とにかく百香と一戦やりてえんだ。」
撃男は百香に対戦を挑むと手を開いた。するとその開いた手から黒く丸い物体が放たれ、百香の目の前で爆発した。
なんと彼は手の甲から爆弾を発射することができ、連射も可能なのだ。撃男の猛攻に百香は手も足も出ない。
すると百香はあることにひらめいた。
百香は爆弾が飛んでくるのを見計らうと刀で跳ね返した。
すると跳ね返った爆弾が撃男を直撃した。
「どうやら俺の負けみてえだな。」
そう言うと撃男はその場を立ち去った。
その後三人は家に帰ると百香はテレビをつけた。するとそこには驚きのニュースが。
「臨時ニュースです。今日昼前から将軍家周辺で謎の爆発事件が相次いで発生しました。新宿署によると爆発は将軍家の敷地周辺で発生し、敷地内を巡回していた警備員も負傷したとのことです。幕府では消費税の増税など国民への強い負担を強いる政策を進めていることから警察は幕府に恨みを持つ者によるテロと見て捜査しています。新宿署はこれを受けて周辺住民に対し極力外出しないよう呼びかけてます。」
このニュースに百香はこうつぶやいた。
「ついに江戸にもテロが発生する事態になったのね。」
翌日
いつものようにポストから朝刊を取り出した時だった。朝刊と一緒に怪しげな封が出てきた。
百香は封の中を見て驚いた。そこには
[将軍は預かった。返して欲しければアジトに来い。 爆破撃男]
将軍を誘拐したという字とアジトまでの地図が記されていた。
百香はいつもの服に着替え、朝食を済ませると舞子が来るのを待った。
そして舞子が来るとすぐに現場へ出発した。
現場へ急ぐ二人、すると
「俺も一緒に行かせてくれ!」
「わたしも。」
八兵衛、優樹奈、穂乃香も一緒に行きたいと付いてきたのだ。
こうして5人で現場に向かった。
一行がアジトの場所まで行くと一軒の平屋の建物が見えた。どうやら撃男のアジトのようでそれを確認すると中へ潜入した。
中に入ると下へ続くエレベーターと階段があった。一行はエレベーターを使おうとしたが、百香がそれを引き止めた。
「待て、エレベーターは罠かもしれない。階段で降りよう。」
一行は階段を下りていくと程なくして下のフロアに着いた。
地下フロアに出ると左に伸びる通路があったので一行は通路を進んでいった。すると
「こんなとこでなにやってんだテメーら!」
「ここはあなたたちの来るところじゃないのよ。」
突然二人組の男女に行く手を阻まれた。
「あたいは将軍の救出に来たの。あなた達こそ何なのよ!」
百香が問い詰めると
「申し遅れたな。俺は撃男の部下で鋼。言っとくけどこれはコードネームだ。」
「私はスリット。鋼とアジトの警備やってるの。」
突然現れた二人は撃男の部下でアジトの警備をやっていたのだ。鋼は普段は黒のスーツを着ているので気がつかないが、鋼のような肉体を持っていて鋼のような肉体と怪力を駆使して戦う。一方スリットは文字通り両側に深いスリットが入った赤色のドレスを着ている。自慢のスリットと色気で男を落とすのが得意だ。
「将軍救出だあ?フンッ!やれるもんならやってみろ!」
そう言うと鋼は百香たちに襲い掛かった。
百香も負けじと反撃を仕掛け一進一退の一騎打ちとなった。
百香と鋼の一騎打ちが続く中スリットも足を開きながら八兵衛に迫った。
スリットの色気攻撃に八兵衛は手も足も出ないすると
スパッ! ドサッ!
スリットの色気攻撃に気付いた百香が後ろから斬りかかったのでスリットはその場に倒れた。そして八兵衛は再び動けるようになった。
その後もなお一騎打ちが続くが体力に限界が来たのか百香は次第に押されていった。
「貴様も強いとはいえ所詮は女だ。」
(ここでやられたら全部終わってしまう。こうなったら・・・)
そう考えた百香はあの技を出した。
「必殺、高速斬り!」
百香は高速斬りで鋼を倒した。
一行は鋼を倒すと先を急いだ。そして遂に一つの扉が見えてきた。
扉を進むとそこは大部屋だった。するとそこには撃男が。
「今すぐ将軍を解放しなさいよ!」
百香はすぐに将軍を解放するよう訴えるが
「残念だけどそれはできない。俺は幕府が憎いんだ。」
解放を拒む撃男。すると撃男はそのいきさつを語り始めた。
「俺は寺子屋を卒業した後親父の工場を継いだ。けど幕府が進めたデフレと止まらない長期不況のせいで工場が潰れそのショックで親父が病に倒れて死んだんだ。親父と工場を失った俺は何としても仕事見つけようと職探ししたけどどこにも雇ってもらえなくて・・・俺はどこにも必要とされてない・・・そう思った俺は死ぬことも考えた。死のうと考えた矢先で幕府は追い討ちをかけるように消費税増税とかTPP参加とか・・・俺が死ぬほど苦しんでるのにそれでも俺を苦しめようとする幕府が許せなかったんだ!だから俺は将軍も幕府も何もかも皆殺しにして復讐してやりたかったんだ。」
撃男の凄惨な過去に百香は心を動かされた。
「幕府が憎いのはあたいにもわかる。あたいだって幕府の政策の数々に散々苦しめられてきた。でもだからと言って暗殺で復讐なんてそんなの間違ってるわ!」
「うるせえ!てめえだって人斬りだろ?人傷つけて何が間違ってるだ!もういい。こうなったら暗殺決行だ。」
将軍に止めを刺そうとする撃男。
「やめろぉーーーっ!!」
百香の悲痛な叫びが響き渡った。すると
「そんなに将軍を生かしておきたいか?ならば俺と戦え。これで俺に勝ったら将軍を解放してやってもいいぞ。」
撃男はそう言うと壁にあるスイッチを押した。
撃男がスイッチを押した瞬間真ん中の床が開いて下から司会者席が二つ並んでせり上がってきた。
司会者席の下にはあのクイズ番組のタイトルロゴが表示された画面とその上に得点ボードという見るからにあのクイズ番組の司会者席そのものだった。
(あのデザインってもしかして・・・)
百香はそう思った。
「では決戦の内容はこのミリオンスロット・・・」
「ちょっと待たんかい!」
ミリオンスロットと言いかけたところで百香が遮った。
「ミリオンスロットってモロにあの番組パクっとるやんけ!(ピー)テレビに怒られても知らんで!」
「あの番組ならもうかなり前に終わってるし小説なら形見えんから色々ごまかせるだろ?文章でごまかせればこっちのものだ。」
「なんかもういろんな意味で悪質なんだけど・・・」
二人の小芝居が続いたところで再び撃男がルール説明を始めた。
「このミリオンスロットには5萬、10萬、20萬、30萬、横取り40萬、50萬、100萬、破産の8つのコマが入ってる。もちろん停止した時に出たマネーが得点だ。スロットを回す時はミリオンスロットの掛け声で回り、スロットを止める時は席に停止ボタンがあるからそれを叩けば止まる。勝負は5回積み立てで行い最終的に得点の多いほうが勝ちだ。また、破産が出た場合は文字通り今まで稼いだマネーは全て没収され相手のものになる。もしも5回目で決着がつかなかったら決着がつくまで続行だ。もしもスロットで勝てば将軍は解放されるが逆に負けると将軍は殺され、江戸の町も地獄の焼け野原だ。準備はいいな?」
「はいっ。」
こうして百香と撃男の将軍の命と江戸の未来を賭けたスロット対決が始まった。
するとここで撃男はあることに気がついた。
「あっ、その前に先攻後攻を決めないと。これもスロットで対決してもらうぞ。もちろう大きいほうが出たほうが先攻だ。ついでに言うとこの時点では得点は加算されないから掛け声は同点スロットだ。では同時に行くぞ。」
「同点スロット!」
掛け声と共にスロットが回りだす。もちろんあのBGMも。そして
スロットを止めると百香は50萬で撃男は5萬が出た。
こうして戦いは先攻が百香、後攻が撃男となった。
早速百香の攻め込みからスタート。そして早速あの掛け声が。
「では行くわよ。ミリオーンスロット!」
百香の1投目は
「あ〜」
5萬だった。
そして撃男も
「ミリオーンスロット!」
撃男の一投目は
「よっしゃーっ!」
なんといきなりの100萬。出だしから95萬の大差をつけられてしまった。
(まずい、このままじゃ将軍も町も危ない。なんとか巻き返しを図らないと。)
百香に焦りの表情が見え始める。
続く2投目は横取りが。もちろん撃男から40萬横取り。
これで45萬対60萬となった。
しかし撃男も負けじと50萬出して110萬となって65萬差とさっきよりも点差が大きくなってしまった。
その後も百香は20萬、10萬と続く一方で撃男は30萬、50萬と続いた。
そしてついに迎えたラストスロットだが、百香は75萬に対し撃男は190萬と大きく開けられていた。
苦悩しながらもラストスロットに挑む百香、すると
「やったー!出たぁー!」
なんと最後の最後で100萬が出たのだ。しかしそれでも175萬対190萬、これでもう完全に負けだと思った。しかしここであることを思い出した。
(そうか、スロットには破産が含まれてる。もしここで撃男が破産を出せば逆転できる。)
すると百香は仲間たちにこう呼びかけた。
「相手がここで破産を出せば逆転できる。破産が出ることを祈って合唱しよう。」
すると
「はーさーん!はーさーん!」
百香の呼びかけに応じて破産大合唱が始まった。
「フンッこれでひるむと思うなよ。余裕で100萬出してやる!」
そして
「ミリオーンスロット!」
最後のスロットが始まった。結果は
「あ゛〜!」
なんと見事に破産が出たのだ。この結果365萬対0萬で百香の逆転勝利となった。
「あたいが勝ったので約束通り将軍は解放してもらうわよ。将軍はどこにいるの?」
「奥の部屋だ。」
撃男に言われるがままに百香たちは奥の部屋へ進んだ。
しかしそこで見たものは将軍の姿などどこにもなくさっきと同じ光景が広がっていた。
「奥の部屋って言ったじゃない!あたいを騙したの?」
すると撃男は
「これで終わりと思ったら大間違いだ。」
不敵な笑みを浮かべると再び壁のボタンを押した。
するとそこにはさっきよりも丸っこくなった司会者席のスロットが現れた。
「勝負は一回だと思ったら大間違いだ。今度はスーパーミリオンスロットで対決してもらうぞ。」
まさかの二回戦に百香はただ驚くだけだった。すると撃男はそのまま解説を始めた。
「スーパーミリオンスロットはさっきと同じく5回積み立てだ。もちろん決着つかなかったら決着つくまで続行だからな。ミリオンスロットと違うのはさっきのに加えて差し上げ25萬と200萬が加わってることとマイナス制度がついたから相手が40萬持ってなくても40萬横取り可能な事だ。あとスロット回す時はスーパーミリオンスロットと言わないと回んねえぞ。順番はさっきの流れで行くから百香が先だ。」
言われるがままスタンバイする百香。そして早速あの掛け声を言った。
「スーパーミリオーンスロット!」
掛け声と共にスロットが回りだす。そしてボタンを押した!結果は・・・
「やった〜!いきなりよ!」
なんと1投目で200萬が出たのだ。続く撃男の1投目は・・・
「お〜、来た!」
撃男は横取りを出した。その結果一回目は160萬対40萬となった。
その後2投目は10萬と100萬で170萬対140萬、3投目は30萬と50萬で200萬対190萬で一気に10萬差まで追いつかれてしまった。
そして4投目は
「あ〜、」
20萬と30萬で220萬対230萬でついに逆転されてしまった。ここで再逆転しないと将軍の命が危ない!そして町も未来がなくなってしまう。百香は逆転を祈った。
そして5投目。結果は・・・
「あ〜、」
百香は30萬で再逆転したものの撃男も20萬を出したので250萬で同点になってしまった。こうして戦いは延長戦に突入した。
その後運命のいたずらなのか延長戦に入ってから揃って同じマネーが出るようになり、50萬・200萬・100萬・5萬・5萬・200萬・差し上げ25萬・30萬・横取り40萬・20萬・200萬・200萬・10萬・50萬と続いた。
そして20投目になると互いに1320萬まで来ていたが二人の体力も限界まで来ていた。百香はこれで決着がつくのを祈りながらスイッチを押した。
すると200萬が出た。続く撃男も押した。結果は・・・
「あ゛〜、」
20萬が出て1520萬対1340萬で百香の勝利となった。
「俺の負けだ。将軍解放していいぞ。」
百香は撃男に勝ったので撃男は約束通り負けを認めた。そして一行は奥の扉を進むとそこには将軍が監禁されていた。
将軍を解放すると一行は将軍と共に部屋を出て通路を進み、エレベーターに乗り込んだ。
地上に戻ると百香はすぐに携帯で警察と病院に連絡した。すると将軍は百香たちにこう言った。
「まさか余が知らず知らずのうちに庶民にこんな苦しい思いをさせてたとはねえ。余がこんな目にあっても仕方ない。今後は幕府の政策を見直すよ。そしてこの事件が片付いたら後日百香たちを招いて宴会しよう。」
将軍の宴会の誘いにもちろん百香たちは応じた。そしてついに警察と救急車が来た。
百香たちは将軍とともに救急車に乗り込み病院に同行した。
一方警察はアジトに乗り込むとすぐに撃男と部下の警備員を捕らえ、警察に連行した。
そして後日、将軍家では宴会が開かれたようだ。
終わり
というわけで今回は美少女侍百香で初の長編を書いてみました。長編ということで新たに敵キャラを出して今の社会問題なども題材にしてみました。ちなみに戦いがミリオンスロットなのはSHOWbyショーバイのミリオンスロットで対決したらどうなるんだろうと思ってやってみました。また、途中の破産大合唱のくだりは93年放送のクイズ年末はSHOWbyショーバイで放送されたワンシーンでありそれをネタにしてみました。さらに破産が出たときに没収されたマネーが全部相手のものになるのは破産分配制度をアレンジしたものです。ここまで読んでくださりありがとうございました。
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